ベースアップ手当は残業代・賞与・社会保険料に入る?給与明細の5つの疑問|毎月の手当なら残業単価に入る
給与明細に「ベースアップ手当」が増えたら、残業代や賞与、社会保険料はどうなるのか。答えを先に書くと、毎月決まって支払われるベースアップ手当は、残業代(割増賃金)の計算の基礎に入り、社会保険の報酬にも入ります。賞与が増えるかは、賞与の計算に手当が含まれるかで職場ごとに変わります。法律と国の資料の書き方を、2026年10月3日に確認しました。
ベースアップ評価料の収入は、国の決まりで「基本給又は決まって毎月支払われる手当」の引上げと、それに伴う賞与・時間外手当・法定福利費の増加分に使うことになっています。ベースアップ評価料そのものの仕組みはベースアップ評価料の総まとめで扱っています。
- 残業代
- 毎月の手当なら計算の基礎に入る(除外の一覧に無い)
- 社会保険料
- 報酬に入る。標準報酬月額は定時決定(9月から)か随時改定で変わる
- 賞与
- 賞与の計算に手当が含まれる職場なら増える。業績連動の分は対象外
- 最低賃金
- 毎月の手当は最低賃金の比較に含める賃金の側
- 確認日
- 2026年10月3日
5つの疑問と答え(一覧)
| 疑問 | 答え(毎月決まって支払われるベースアップ手当の場合) |
|---|---|
| 残業代に入る? | 入る。割増賃金の基礎から除けるのは、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時の賃金・1か月を超える期間ごとの賃金だけ |
| 社会保険料は上がる? | 報酬に入るので、標準報酬月額が上がれば保険料も上がる。変わるのは毎年9月(定時決定)か、2等級以上の差が出たときの随時改定 |
| 賞与は増える? | 職場の賞与の計算方法しだい。基本給に連動する賞与なら、基本給を上げた職場では増える |
| 最低賃金の計算に入る? | 入る側。最低賃金の比較から除くのは、臨時・1か月を超える期間ごとの賃金、残業・休日・深夜の割増分、精皆勤手当・通勤手当・家族手当など |
| 所得税はかかる? | かかる。給与所得として、ほかの給与と同じ扱い |
残業代(割増賃金)には入る
労働基準法第37条は「第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。」としています。厚生労働省令(施行規則第21条)が挙げているのは、家族手当・通勤手当のほか「別居手当」「子女教育手当」「住宅手当」「臨時に支払われた賃金」「一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」です。
この一覧に、ベースアップ手当のような毎月決まって支払われる手当は入っていません。そのため毎月のベースアップ手当は、残業代・休日出勤・深夜の割増賃金の計算の基礎に入るのが原則です。反対に、ベースアップ評価料の余りを3か月ごとや年1回の一時金で受け取った場合は「一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」にあたり、基礎から外れることがあります(余りの扱いはベースアップ評価料が余ったらどうなる?で扱っています)。
国の資料も、ベースアップ評価料の収入を使える範囲に「時間外手当・賞与などのうち基本給等に連動して引き上がる部分」を入れています。手当が増えれば残業代も増える、という前提の書き方です。
残業単価はいくら上がる?(編集部試算)
看護師の所定内給与額の平均333,200円(令和7年賃金構造基本統計調査)に目標3.2%を当てはめると、ベースアップの目安は月10,662円です(看護師のベースアップ手当はいくら?の試算)。月の平均所定労働時間を160時間と仮定すると、1時間あたりの賃金は約66.6円上がり、時間外労働(2割5分増し)の単価は約83円上がります。月20時間の残業なら、残業代は月約1,666円増える計算です。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| ベースアップの目安 | 333,200円×3.2% | 月10,662円 |
| 1時間あたりの増加 | 10,662円÷160時間 | 約66.6円 |
| 残業単価の増加 | 約66.6円×1.25 | 約83円 |
| 月20時間の残業 | 約83.3円×20時間 | 月約1,666円 |
社会保険料:報酬に入り、変わるのは9月か随時改定
健康保険法は「報酬」を「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。」と定めています(「臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるもの」は除く)。ベースアップ手当もこの報酬に入ります。
ただし、手当が増えた翌月にすぐ保険料が変わるわけではありません。
- 定時決定——毎年4〜6月の報酬の平均で標準報酬月額を決め、「その年の九月から翌年の八月までの各月の標準報酬月額とする。」(健康保険法第41条)。2026年6月に手当が始まった職場では、6月分が平均に入ります
- 随時改定(月額変更)——日本年金機構は、固定的賃金の変動の例に「昇給(ベースアップ)、降給(ベースダウン)」や「住宅手当、役付手当等の固定的な手当の追加、支給額の変更」を挙げ、変動月以後3か月の平均で「2等級以上の差が生じた」場合に、4か月目から改定されると説明しています
月1万円前後のベースアップ手当だけでは、2等級の差にならない人もいます。その場合は、次の定時決定で保険料に反映されます。保険料が上がると手取りは少し減りますが、厚生年金の将来の年金額の計算にも標準報酬月額が使われます。
賞与:増えるかは賞与の計算方法しだい
賞与が「基本給×○か月分」で計算される職場で、ベースアップを基本給の引上げで行えば、賞与も増えます。ベースアップを手当で行い、賞与の計算に手当を含めない職場では、賞与は変わりません。
国の資料は、ベースアップ評価料を充てられる範囲に「時間外手当・賞与などのうち基本給等に連動して引き上がる部分」を入れる一方で、「※賞与のうち、業績に連動して引きあがるものについては「基本給等」の対象外である。」としています。業績で決まる賞与の増額は、ベースアップとは数えられません。
最低賃金・所得税
- 最低賃金——最低賃金法施行規則は、比較から除く賃金を「臨時に支払われる賃金及び一月をこえる期間ごとに支払われる賃金」や、時間外・休日・深夜の割増分などと定めています。厚生労働省の解説の計算例では、精皆勤手当・通勤手当・家族手当も除かれ、職務手当は除かれていません。毎月のベースアップ手当は、最低賃金と比べる賃金に含める側です
- 所得税——所得税法は給与所得を「俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。」としています。ベースアップ手当も給与所得として、ほかの給与と同じく源泉徴収されます
欠勤・日割り・パートの扱いは就業規則で決まる
欠勤したときにベースアップ手当を減らすか、月の途中の入退職で日割りにするか、パートの手当をどう計算するかは、法律では決まっていません。勤務先の就業規則・賃金規程で決まります。
ベースアップ評価料の施設基準の通知は、職場に対して、賃金改善の方法などを対象職員に周知し「就業規則等の内容についても周知すること。」を求めています。対象職員から照会を受けたときは「書面を用いて説明すること等により分かりやすく回答すること。」とされています。分からないときは、まず書面での説明を求められます。
なお、施設基準は、ベースアップを行う賃金項目以外の賃金項目(業績などで変わるものを除く)の「水準を低下させてはならない。」としています。ベースアップ手当を付ける代わりに、ほかの手当を下げることは認められていません。
給与明細で確かめること
- 手当の名前と額——「ベースアップ手当」「処遇改善手当」など名前は職場ごとに違います。毎月決まった額か、一時金か
- 残業単価——ベースアップ手当が始まった月から、時間外手当の1時間あたりの額が上がっているか
- 社会保険料——9月分以降の保険料で、標準報酬月額が変わったか
- 職場が届け出ているか——地方厚生局の名簿で確かめられます。見方はベースアップ評価料が給料に反映されない?にまとめています
よくある質問
ベースアップ手当は残業代の計算に入りますか?
ベースアップ手当で社会保険料は上がりますか?
ベースアップで賞与も増えますか?
欠勤するとベースアップ手当は減りますか?
出典
- 労働基準法第37条・労働基準法施行規則第21条(割増賃金の基礎に算入しない賃金、2026年10月3日確認)
- 健康保険法第3条(報酬・賞与の定義)・第41条(定時決定)・第43条(随時改定)(2026年10月3日確認)
- 日本年金機構「随時改定(月額変更届)」(固定的賃金の変動の例・2等級以上の差、2026年10月3日確認)
- 最低賃金法施行規則第1条・厚生労働省「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」(2026年10月3日確認)
- 所得税法第28条(給与所得、2026年10月3日確認)
- 「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日保医発0305第8号・医科の抜粋)(使い道・ほかの賃金項目・周知と書面での説明、2026年10月3日確認)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要1.賃上げ・物価対応(賃上げ)」・「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について」(ベースアップの範囲・賞与の扱い、2026年10月3日確認)
- 政府統計の総合窓口(e-Stat)令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者・職種 第1表(看護師の所定内給与額、2026年10月3日確認)
本記事の条件は、上記の法令と公表資料の記載を確認日時点で書き写したものです。残業単価の増加は、統計の平均に目標の率を掛け、所定労働時間と割増率を仮定した編集部試算です。個別の扱いは勤務先の就業規則・賃金規程で決まり、判断に迷うときは勤務先や労働基準監督署・年金事務所に確かめてください。当編集部は、記事で取り上げる医療機関・求人サービス各社の関係者ではありません。
更新履歴
- 2026年10月3日:公開